第20話 ダイヤモンドの深謀遠慮(1)
2020.06.15
最初はアメリカでスタートした。
みなさん、DeBeersという名前を聞かれたり見たことがありますか?
数年前DeBeersというジュエリーショップが、東京や大阪に華々しくオープンしたのでご存知の方も多いかもしれません。
デビアスは私のJWTにおける最初の仕事。
そしてその後22年間に渡って仕事を続けた思い出深いクライアントなのでここで簡単にご紹介します。
もともとデビアスの本業はダイヤモンドの採掘と取引、流通、加工、卸売を行う地味な会社なのです。この会社の創始者はかの有名なセシルローズ。いくつかの変遷を経て、現在は主に鉱業資源などを取り扱う、いくつかの企業の運営元、投資グループである、アングロアメリカンの傘下となっています。
デビアス社はかって世界のダイヤモンドの80%〜90%を支配していました。当時デビアス社は世界的に厳しい生産調整・出荷・価格調整を行い、生産されたダイヤモンドは全て買いとって、販売することでダイヤモンドの価格を安定させ、ダイヤモンドに於いて絶対的な力を保持していました。それと共に「イメージキャンペーン」を行いダイヤモンドの価値をイメージ面で支えたのです。
その後デビアスはアメリカで独占禁止法違反に問われ、敗訴し、またロシアやオーストラリアで大量のダイヤモンドが生産されるようになると、支配力が弱まり、そのシェアは5割ほどに落ち込んでしまっています。しかし、デビアス社が作り上げた仕組み、ダイヤモンドのイメージ戦略は、今でも続き、ダイヤモンドの価値は高く維持されています。それは、デビアス社の戦略がダイヤモンドという製品の販売には極めて有効であったことを意味しています。
デビアスは1939年の第二次世界大戦の直前から、アメリカで「ダイヤモンドは永遠と愛の象徴」として、婚約・婚約指輪の理想であると宣伝をスタートさせました。例えば、
・映画の中で結婚祝いとしてダイヤモンドを使う。
・有名人を使い、雑誌や新聞中にダイヤモンドのロマンチックな面を想起 させるストーリーを掲載する。
・ファッションデザイナーや流行仕掛け人を雇い、ラジオやテレビで流行を広める。
・ダイヤモンドを広めるためにイギリス王室に献上する。
このデビアスのPRを担当したのは、アメリカの代理店、NW Ayer。開発されたキャンペーンは、「Diamonnd is forever」のスローガンとともに、人々にブランド名を植え付けることなく、ただダイヤモンドの理想的な永遠の価値を表現するという点で、後年長く模倣される新しい広告形式(イメージ広告)を確立させました。
デビアス社の何か記念日にいただいた銀製のペン。
このキャンペーンは成功し、アメリカのダイヤモンド市場を復活させ、それによって高価な贅沢品という印象が弱まったことによって、以前は存在しなかった一般の人が手にできるという販路を開拓することに成功したのです。
次回は日本での戦略をご紹介します!